先日『応天の門』-若き日の菅原道真の事-の千秋楽がライブ配信されました。
この作品の原作は灰原薬さんで人気シリーズとして現在も続いており、1巻と2巻を舞台化しています。
この作品の演出は素晴らしく、原作のイメージを壊さない舞台でした。
和物の時代劇なのにミュージカル要素が多めだと思いました。
まず、キャスト別の感想を書いていきます。
応天の門のキャスト別の感想
月城かなと:菅原道真
道真は月城かなとさん、原作の道真より大人でカッコいいイケメンです。
ですが、表情や話し方など、流石!トップスターでした。
冒頭の門の屋根で本を読み、女性宅からの帰りの業平を推理するシーンは原作のまま。
灰原薬の世界をキチンと再現していました。
名探偵ホームズか、コナンの様でした。
また、協調性のない道真が段々仲間を意識していく様子が分かりやすく表現していました。
海乃美月:昭姫
低めの声にして、言い方も強く、女一人で切り盛りする店主ですから、強さをアピール。
笑い方も豪快でした。
道真を一括したり、権力に縛られて生きたくないと話す道真に「大切なのはどこで生きるではなく人の心を知ること、業平の心を考えて」とソロ。地声で歌は上手。
月城道真とデュエットし、「鬼の仕業にするのは理に叶わない、私達だけで捜査する!」という道真に
「もーーーっ分かっちゃいないんじゃない!あの坊ちゃんは!」と慌てっぷりが上手いねえ。
風間柚乃:藤原基経
悪役が似合う!ソロの歌は切なく、ワルのイメージ。
ギャツビーの人あたりの良いトムとは全然違うイメージの役です。
私は、風間さんは黒い役が美しさや色気が出ると思いました。
子どもの頃の手古は偉そうで高飛車な少年でした。
道真の兄の吉祥丸の読んだ歌に感動し尊敬している眼差しで歌い、歌い終わった時にニヤリとする顔が悪そうでした!
高子を帝に入内させて、権力を得るために多美子を亡き者にしようと毒入りの酒を飲ませようと画策します。
己の権力のみに固執している芝居が上手い!しかも風間さんは美しい!
平安時代の貴族の衣装は、黒い束帯と呼ばれる衣装です。
小袖(肌着の役目)の上に大口という緋色か赤系の着物を着ます。
その大口の赤(あでやかな)と束帯の黒い色がやけに色っぽい!
宝塚のワルは色っぽくて、だからイケメンぶりが際立つことが素敵!
束帯とは、ひな人形のお内裏様の衣装です。
中に着ている赤い着物を大口と呼びます。
平安時代の貴族の正式な服装だったそうです。
鳳月杏:在原業平
イケメンなので女性にモテる武将です。道真を気に入り捜査に巻き込むあたり目が高い!計算高い大人の男です。
娘や貴族の姫への流し目が素敵です。
ちょっと鼻声だったので花粉症?かと心配してしまいました。
ですが、相変わらず歌もお芝居も上手です。
大口はワイン色(深い赤)でした。
千海華蘭:清和帝
若い帝役にピッタリでした。声も良くてお芝居も上手、研17です。振り覚えが早いと白雪さんが言っていました。凄いですね。
東京公演で退団するのが残念です。
もっと色々な役が観たかった~
彩海せら:紀長谷雄
原作を読んだイメージ通りでした。
高い声でいつも走りまわっていて、何にでも興味があるけど、へまをしてしまうような学生です。
ギャツビーの新公主演では2枚目のカッコいい大人の男でしたが、3枚目役や若い役を演じることが多いですね。目の輝きが好きです。もっと色々な役をみたいです。
彩みちる:白梅
期待度の高かった彩さんの白梅は、原作のイメージとおりでした。
そばかすのある娘で髪をあまり上手に束ねていません。
道真の側仕えですが、博識があり手助けを行います。
長谷雄とはいいコンビでした。
礼華 はる:藤原常行
礼華さんは公演の度に美しくなっています。今回も輝いていました。
妹の多美子を守るために、毒が入っている酒の瓶を飲み干してしまいました。
飲まずに割ってしまえば良かったのに…と思いました。
それでは藤原基経の思うつぼで、悪事を暴けないからダメなのでしょうね。
この時代はまだ科捜研はないから、後から証拠固めは難しいですね。
それにしても大事な妹の入内の為に自らを犠牲にするとは…
礼華さんの潔い飲みっぷりと毒がまわって倒れる芝居が美しすぎたなあ。
よい男役になりました!あっぱれ!
瑠皇りあ:吉祥丸
利発そうな吉祥丸を演じていました。
ソロも上手で、吉祥丸と道真と藤原家の関係性がわかりやすく演出されていました。
瑠皇さんのソロで、幼い頃の自分と弟(道真)から道真の過去の記憶と葛藤や藤原基経への激しい怒りをダンスにした月城さんが表現し分かりやすかったです。
天紫 珠李:藤原高子
業平の元の恋人です。少なからず、二人ともお互いを思い合っています。
高貴な雰囲気や気位いが高そうな芝居でした。
この時代、天下を取るために娘は駒として扱われます。
清和帝より年上なのに、藤原良房(光月るう)や藤原基経(風間柚乃)に入内する為の駒として扱われます。
過去にかけおちしたことがあるので、逃げない様に見張り役に基経の兄が二人住みつきます。
かけおちは業平とでした。
結果的に連れ戻されてしまいました。
結愛かれん:大師
邪気を払う為(百鬼夜行を鎮める)の祭りが開催され、踊り子の大師(結愛かれん)と月城かなとが帝の前で舞を披露します。結愛さんのダンスは官能的で美しい。
結愛さんも東京公演で退団されます。残念です。
鬼の集団は藤原基経が古寺を根城にしていたことが分かったのに捕まえようとしない業平でした。
業平を冷たく見下す道真は多美子を安全な場所に移すために夜に牛車で運ぶ許可を帝に貰います。
このあたりはコーラスがナレーターの様に歌い理解できます。
業平抜きで作戦は実行されました。
ついに鬼の集団が現れ、切り合いになりました。
長谷雄は怖くて泣き叫びながら対戦し、牛車の姫に扮した昭姫を奪われ、取り返そうとした道真が斬られました!
ですが、本を胸に入れていたため傷は負わず、昭姫も無事でした。
長谷雄が泣き叫ぶのもやっぱり!でした。
彩海さんは本当に長谷雄になりきっていました。
斬られても怪我をしない所は漫画ですね。
ヒーローには不死身でいて欲しい現れです。
帝の前で、「鬼は流行病で死亡」と業平が報告します。
業平がこの作戦に関与しなかったのは、道真を危ない目に合わせたくないことや菅原家と藤原家の確執を考えてのことでした。
でも、手柄はしっかり業平の物です。ずるい大人ですね。
一方道真は昭姫に「共に生きる人の心を知ることは唐に行かず、この国で友を守る!戦いは始まったばかり!」と話しました。
そして月城かなとのソロで幕が閉じました。
原作の灰原薬のコミックです。
Amazonのプライム会員の方はkindle版はプライム特典で無料で読めます。
関連記事:応天の門が宝塚で2023年ついに舞台化
応天の門の演出が光る時代劇ミュージカル
田渕大輔さんは登場人物の一人ひとりを深堀りして演出するのが得意な方で「お客様の為に出演者が生き生きと演じるためにをこころがけている」そうです。
また出演者が最も魅力的に見える方法を探って、自身の描く世界観を演者が自分の物として育ててくれる舞台作りが理想とも語っていました。
とにかく2時間で原作2話分を分かりやすく演出しなくてはいけないので、ナレーターが重要になってきます。
狂言回しという手法が多い中、力強いコーラスで伝えていました。
歌で解説し、ダンスで表現するシーンもあり、とても分かりやすかったです。
今までの時代劇もののミュージカルとは少し違ったように思えました。
原作を知らなくてもおおよその話の筋は理解できたのではと思います。
舞台挨拶と退団者7名
大劇場を走り抜けられ感謝でいっぱいです。
2月4日の初日は満月で迎え、明日(3月7日)は満月です。と月城さんの挨拶と、退団者の挨拶がありました。
蘭世 惠翔(ゆうき)102期研7
運命の道のりを男役から娘役になり卒業するとは夢にも思わなかった。
感謝の気持ちでいっぱいです。
花時 舞香(しょうこ)101期研8
華やかで美しい娘役に憧れ、夢へと変わり唯一無二の舞台に上がることができました。
宝塚で経験したことは一生の宝です。
3回目の舞台挨拶で月城さんに振られて「宝塚フォーエバーで涙が溢れて…」
私も涙が溢れてしまいました。
結愛 かれん(ゆい)101期研8
夢はいつも無限大…祖母が残してくれた言葉を胸に8年間でした。東京公演の千秋楽まで走り抜けます。
2回目の挨拶では、今も実感がありません。月組の皆さんが好きすぎて!と笑顔でした。
清華 蘭(あーちゃん)98期研11
月娘一、楽しんでいたと思います。娘役に憧れ、想像を超えた愛に溢れる場所でした。卒業するその日まで娘役を愛し抜きたいと思います。
朝霧 真(ぎり)97期研12
芸の道に終わりはありません。努力することは続けることが一番難しい。切磋琢磨できる仲間の愛がありました。
千海 華蘭(からん)92期研17
ライトを浴びた瞬間全身から湧きたつ様な感覚がありました。ステージの神様ありがとう。
光月 るう88期研21
心射抜かれた大好きな事を思いのままに、清く正しく美しく、そんな人になりたい。明るく強くたくましくというモットーがあります。東京公演の己の高みを目指してまいります。
一度に7名も退団です。残念ですが、皆さんの第二の人生を応援していきます。宝塚での経験は必ずどこかで役に立つと思います。
素晴らしい舞台をありがとう。
まとめ
月組大劇場の千秋楽『応天の門』のライブ配信がありました。
原作は灰原薬さんです。
平安時代が舞台で、和製のホームズとワトソンの様で藤原家や菅原家の確執や時代背景を表した物語です。
キャラクターも個性的で、月組の皆さんはその役になりきって演じていました。
原作がある場合は、固定のイメージが植え付けられ、原作に寄せて役作りをしがちです。
それも良いと思いますが、違う解釈の役作りも評価したいです。
今回は原作のイメージを壊さない公演となっていました。
演出家の田渕大輔さんを始め、月組生の努力に拍手を送りたいです。
まだ、東京公演が3月25日~4月30日までありますので、最後まで走り抜けて貰いたいです。
迫力のラテンショーも素晴らしかったので別に書いていきます。
月組は5月がoffなので、宙組『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』や花組『二人だけの戦場』を観劇する月組生が客席にいると思いますので、周りをキョロキョロしてみてください。
見かけたら騒がず、静かに喜びましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次の月組公演の『Death Takes a Holiday』です。
↓6月12日~28日 東急シアターオーブ
コメント